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第3回 薬剤耐性(AMR)への取組はどうなっているの?

​ 松村 充

薬剤耐性(AMR)への取組はどうなっているの?

各国が協調して拡大防止の取組を本格化


もし、世界のどこかの国で薬剤耐性菌による感染症が爆発的に流行した場合、人や物の交流を通じて世界に拡大するおそれがあります。薬剤耐性(AMR)の拡大を防ぐには、国際的な取組が必要です。こうした状況を踏まえて、WHO※(世界保健機関)は、次のような注意喚起を行っています。


「薬剤耐性により、これまで以上に増加している細菌、寄生虫、ウイルスや真菌が引き起こす感染の効果的治療や予防が難しくなっている。薬剤耐性は、世界規模の公衆衛生にとって深刻化する脅威となっており、全ての政府機関や社会が行動を起こす必要がある。」

※WHO:Antimicrobial resistance Fact sheet

参考)・公益社団法人日本WHO協会「WHOファクトシート(薬物耐性)」


日本でも平成28年(2016年)4月に取りまとめた「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」に基づき、下記の6つの分野において薬剤耐性対策に取り組んでいます。


分野 目標


普及啓発・教育       国民の薬剤耐性に関する知識や理解を深め、専門職等への

教育・研修を推進


動向調査・監視       薬剤耐性及び抗微生物剤の使用量を継続的に監視し、

薬剤耐性の変化や拡大の予兆を適確に把握


感染予防・管理       適切な感染予防・管理の実践により、

薬剤耐性微生物の拡大を阻止


抗微生物剤の適正使用    医療、畜水産等の分野における抗微生物剤の

適正な使用を推進


研究開発・創薬       薬剤耐性の研究や、薬剤耐性微生物に対する予防・診断・

治療手段を確保するための研究開発を推進


国際協力        国際的視野で多分野と協働し、薬剤耐性対策を推進



なお、2021年6月に開催されたG7保健大臣会合では、「薬剤耐性((AMR)について、1)抗菌製品の持続的な供給に対する経済的障壁を克服し、抗菌薬研究開発における持続的なイノベーションの確保を目指す。2)抗菌薬供給網を多様化し、強化する。3)医薬品製造施設や医療施設、農業、水産養殖などから環境中に放出される抗菌剤濃度基準を作成するために知見を集積する。」など、継続して取り組むことが決定しています。


この様に世界規模での取り組みが重要ですが、なかなか成果を挙げる難しさも認識されているようです。大切なのは、医療関連組織が共通の認識を持って継続的な行動を実行することだと思います。


次回は、オリンピックに関与した感染症についてお伝えしたいと思います。


帝京大学 医療技術学部 臨床検査学科

准教授 松村 充

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