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​ 松村 充

第1回 薬剤耐性(AMR)とは?

私の研究専門分野は、薬剤耐性菌の検出と耐性メカニズムの解析です。

元々は臨床検査技師でしたので、喀痰や尿、糞便の中から病原細菌やウイルスを検出していました。この病原細菌の中に、薬剤耐性菌が存在していることに興味を持ち、研究することに至っています。


この薬剤耐性について、数回に分けて話をしていきたいと思います。

薬剤耐性とは、抗菌薬が効きにくくなる、または効かなくなることを意味しています。実は、この耐性菌が世界中で増えて問題となっているのです。


細菌やウイルスなどの病原体によって引き起こされる病気のことを「感染症」といいます。こうした感染症の中で、細菌が原因で引き起こされる病気に有効なのが、原因となる細菌などを殺したり、その増殖を抑制したりする働きを持つ「抗菌薬」です。皆さんも咳が出て止まらない時や、膀胱炎を疑って病院へ行ってお薬を処方してもらうことがあると思います。このお薬を抗菌薬(※1)といい、様々な感染症の治療が可能となりました。

しかしながら、1980年以降、従来の抗菌薬が効かない「薬剤耐性(AMR(※2))」を持つ細菌が世界中で増えてきて問題となっています。世界中から、抗菌薬への耐性を持つ様々な細菌が確認されています。このため、感染症の予防や治療が困難になるケースが増えており、今後も抗菌薬の効かない感染症が増加することが予測されます。


脚注※1 抗菌薬

実際の医療では、細菌に対して作用する薬剤の総称として使われており、抗生物質や抗生剤とも呼ばれています。本稿では細菌に限定して記載しているため、抗菌薬と表記しています。


脚注※2 薬剤耐性:AMR (Antimicrobial resistance)

特定の種類の抗菌薬が効きにくくなる、または効かなくなることを、「薬剤耐性」といいます。本稿では、耐性化している細菌を「耐性菌」としています。なお、薬剤耐性は、細菌だけではなく、ウイルスや寄生虫(原虫)でも確認されますが、本稿では細菌に限定して記載しています。


耐性菌が増えると、抗菌薬が効かなくなることから、これまでは、感染、発症しても適切に治療すれば軽症で回復できた感染症が、治療が難しくなって重症化しやすくなり、さらには死亡に至る可能性が高まります。


特に、免疫力の弱い乳幼児や妊婦、高齢者、また、持病を持つ人は、感染症にかかると重症化しやすいため、耐性菌が広まり使用できる抗菌薬が減ると、命の危険が高まります。

薬剤耐性(AMR)の拡大防止は、私たちにとって非常に重要なことなのです。

次回は薬剤耐性(AMR)の拡大を防ぐにはどうしたらいいのか、話したいと思います。



帝京大学 医療技術学部 臨床検査学科

准教授 松村 充

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