top of page
  • 杉岡 陽介

トイレでの感染リスク

コロナ禍において、感染経路は咳やくしゃみなどからの飛沫感染対策としてマスクは必需品になっていますが、それ以外に接触感染や経口感染(糞口感染)にも注意が必要です。

今回は誰もが必ず使用するトイレを中心に考えてみたいと思います。

問題となるのは、「接触感染」についてと「水洗操作に関して」です。


1,接触感染について

接触感染は、感染者の皮膚や唾液、体液、排泄物など病原体に汚染されたものに触ることによって起こる感染のことで、トイレの場合、入口のドアノブ、便座にペーパーロール、水洗ボタン、手洗いシャワーなど、入って出るまでの間多くの物質に触っています。すべてが感染経路です!


ここでそれぞれ、物質ごとの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が不活化されるまでの時間をお示しします。このデータは2020年日本リスク学会にて報告された数値です。

ステンレス、プラスチック 4-7日間

セラミック、テフロン 5日間

紙、木材 1-2日間

ガラス 2-4日間

(Chin et al., 2020; Kampf et al., 2020; van Doremalen et al., 2020)


つまり感染者が使ったトイレは最大で7日間は接触感染のリスクがあるという結果になります。トイレは出来るだけ触らない、使用前は便座などを拭いてから使用する、使用後も水洗ボタンなど最小限の接触とし、使用後は必ず石鹸などで十分手を洗いましょう。

特に、不特定多数が使う公衆のトイレでは気を付けてください。


2,次に盲点なのが便を流す操作です。

海外では便中に排泄される新型コロナウイルスのPCR検査もされています。鼻腔から新型コロナウイルスが検出される日数は平均17日なのに対し、便では平均28日も排出され続けます。

海外では下水をPCRで検査し、SARS-CoV-2が検出されない場合はその付近の住民に罹患者がいないと言えるため個々の住民に対するPCR検査は不要としている地域があります。検出された場合、下水を含む水は使わないよう指導するといった動きもあります。

香港城市大学の報告によれば、排便後水洗の操作によってウイルスを含んだ排泄物から1回当たり最大80万個のウイルスを含むトイレットプルームと呼ばれる飛沫が吹き上がるとの報告があります。(Physics of Fluids 32, 065107 (2020))この吹き上がったウイルスがトイレ中に拡散し接触感染の原因となりますので、使用後に流す前には、トイレのふたを閉め、飛沫の拡散を最小限に抑えましょう。


まとめますと、感染者が使うトイレは便から1か月間のウイルスの排泄があり、排泄されたSARS-CoV-2がトイレットプルームによってステンレスやプラスチックに付いた場合さらに7日間は活性を保つため、約40日間は接触感染リスクがあるということが、生活空間でトイレが要注意な要因です。


感染予防と同時に換気や室内の抗菌対策もしっかり行い、新型コロナウイルスに罹患(COVID-19)しないよう対策を十分に行っておきましょう。


公益社団法人 東京都臨床検査技師会

業務執行理事 副会長

杉岡 陽介


最新記事

すべて表示

デルタ株への対策について

2021年8月、東京オリンピックが終了し第5波と呼ばれる新型コロナウイルス罹患者増加の真っ最中、緊急事態宣言の中、新型コロナウイルスの主役はインド由来のデルタ株へと置き換わり、東京では95%以上だとされています。 置き換わりとは今までのウイルスよりも感染力が強いため既存のウイルスが広がれず淘汰されることで、これは自然界の掟です。2021年8月はデルタ株が有意ですが数年後は違う株が有意になっていると

免疫力を上げるためには?

免疫力を上げるためには? ~腸内細菌との関わりについて~ 確認ですがワクチンを接種したからと言ってコロナに罹患しないわけではありません。 マスクをしない、大勢で騒ぐなどしないように、今まで通り、3密は避けてください。 ワクチン接種によって罹患した場合に、重症化リスクを低減し症状の緩和が期待できます。 また、感染リスクも低減されますので、大事な人達へうつしてしまうリスクも低減できます。 さらに身体が

bottom of page